夜泣石伝説に登場する「子育飴(こそだてあめ)」を食す!
その昔、お石という身重の女が小夜の中山に住んでいました。
ある日お石がふもとの菊川の里で仕事をして帰る途中、
中山の丸石の松の根元で陣痛に見舞われてしまいます。
そこを偶然通りがかった轟業右衛門という男がしばらく介抱していたんですが、
お石が金を持っていることを知ると斬り殺して金を奪い逃げ去ってしまいます。
その悲劇のまっただ中、お石の傷口から子どもを出産。
霊となったお石は、そんな子どもを助けたい一心で、そばにあった丸石に乗り移り、
泣き声をあげ自分の赤ちゃんがここにいることを知らせます。
おかげで生まれた子はすぐ近くにある久延寺の和尚に発見され、音八と名付けられます。
すくすくと育った音八は、大和の国の刀研師の弟子となり、やがて評判の刀研師へと成長します。
そんなある日、音八は客の持ってきた刀を見て「刃こぼれしているのが実に残念だ」というと、
客は「小夜の中山の丸石の附近で妊婦を切り捨てたため」と言ったため、
音八はこの客が母の仇と知り、名乗りをあげて恨みをはらしたそうな。
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確かこんな感じだったような気がします。
このお話に出てくる久延寺の和尚なんですが、音八を飴で育てたらしく、
その水飴が現在でも小夜の中山の名物となっているようです。
今回は音八を育てた琥珀色の飴「子育飴」を調べてみました。
お伺いしたのは小夜の中山にある「小泉屋」さん。
小泉屋さんは夜泣石のある小高い丘の麓にあって、
夜泣き石を管理されている方でもあり、
260年も前から「子育飴」を作っている老舗でもあります。
小泉屋さんの創業は宝暦元年である1751年。
現在のご主人は10代目になるそうです。
昔は夜泣石の舞台である久遠寺の近くに沢山の子育飴のお店があったんですが、
時代の移り変わりで子育て飴を販売しているお店も少なくなり、
ましてや昔ながらの手作り製法を続けているのは、
小泉屋さんを残すのみになってしまった様です。
そんな子育て飴なんですが、
今回は特別にその作成工程を見せて頂けました。
ちなみにタイミングが良ければ見学もできるそうです。
子育飴の原材料は、もち米と麦芽。
もち米を蒸かし麦芽と混ぜて木桶で一定の温度の湯に入れて一晩寝かせ糖化させます。
木桶を使うのは酒造醸造とイメージが似ていて、
保温性と材料の醗酵に良いからということで、
木桶自体にも長い年月を感じます。
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一晩寝かせた材料は麦芽糖になっていて布でこしながら、
その麦芽溶液を最期の1滴まで取り出します。
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次に取り出した麦芽糖液を直径1.5mほどの大きな鍋に移します。
この時はまだ濁った色の液体ですねー。
↓
竈に火をいれ、煮詰め工程開始。
その日のお天気や気温、火の具合によって煮詰める時間が異なり、
長時間の煮詰め作業でも鍋から離れる事はないそうです。
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約5時間の煮詰め作業をすると、細かな気泡が交じり合って、
表面がキャラメルのようになってきます。
焦がさないように丹念にかき回しながら、
頃合いを見て火を落とし余熱での作業に入ります。
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煮詰めが終わった飴を鍋に移し替えます。
この作業がとっても大変!
煮詰まった飴は重いし腰を長時間曲げて踏ん張って作業するので、
もの凄く腰が痛くなる作業なのと、
手が痙攣してしまう様な重労働のピークだとか。
ひえー。
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さらに、細かくかき混ぜて気泡を抜きます。
これもグルグル長時間の作業でさらに腕に負担がかかります
しかーし!急がないとどんどん飴は重くなっていきますから堪えてグルグル。
↓
気泡が抜けてくるとようやく琥珀色の飴になってきます。
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こうした工程を経て、
さらに1日かけて自然に冷やしながら気泡を抜いて完成します。
そんなワケで子育飴が完成!
小泉屋さんでは、1本100円で味わうことができます。
青空に透き通る琥珀色の飴。
ただ相当柔らかいので、
眺めているとどんどん形が変わってきちゃいます。
早速、口に入れるとコクの深い優しい感じの甘さ。
単純にお砂糖から作った飴よりもまろやかですが、余韻も残る感じ。
砂糖水と蜂蜜くらいの差を感じます。
舌の上でコロコロ時間をかけて楽しむと喉の調子が良くなりそう。
風邪でのどを傷めた時とかいいかもしれませんね!
ちなみにこれからのシーズンにおすすめなのが、
「子育飴ソフトクリーム」。
砂糖の代わりに子育飴が入ったおり、
和風の甘みがしっかり感じられるソフトクリームです。
まわりには昔ながらの生活が感じられる環境が多く、
最近では自転車やバイクツーリングでのんびりする方も多いそうです。
子育て飴を舐めながら、近くの里山散策とか、
パワースポット巡り、旧跡めぐりなんてのもいいかもしれませんね。
■小泉屋
掛川市佐夜鹿57-8
0537-27-1010
【営業時間】8:00~18:30/木曜定休
(by 静岡星人)
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