【方言】第15回 やっきりする
この言葉を初めて聞いたのは、富士市に住む伯母からでした。
「まったく、うちの子もひとこと言えばいいのに、そういうところ気がきかないもんで、あたしゃほんとやっきりしちゃうやあ!」
やっきり? ちゃっきり?
正確な意味はわからないものの、伯母はイラだっている様子。口調と状況からして、どう考えてもいい意味ではありません。娘さん、つまり私の従姉に「やっきり」していることははっきりしています。
よくわからないなりに、私は伯母さんを「やっきり」させることの無いよう、気をつけようと思ったのでした。
【やっきり】[副詞](スル)
腹が立つ。頭にくる。イライラする。じれったい。悔しい。
「やっきりする」と「スル」をつけて使われる。強めの表現として「やっきりこく」などと使われることもある。
《類義語》ごんわく
単に腹が立つだけでなく、「非常に腹立たしいが、それをストレートに本人にぶつけることができない事情があるので、愚痴として第三者に伝える」というシチュエーションでよく使われる。話し手は「誰かに言わなくてはうっぷんが溜まってしまってどうしようもない状態」なので、聞き手は「ふんふん、ほうかね。そらぁ、えらいねえ」と素直に耳を傾けてあげよう。
語源は「焼く」かと推察される。 「焼く」には「恋に身を焼く」「やきもちを焼く」のように「悩んで苦しい思いをする」や、「手を焼く」のように「苦労をする」といった意味がある。「気をもんでイライラする」という意味の「やきもきする」も、「やっきり」すると同じ語群に入りそうだ。
個人的な印象だが、「やっきりする」は主に女性が使っているように思う。これは「やっきりする」が女性語であるというよりは、のんびりした静岡の男性に対し、やや気が強くサバサバした静岡の女性が「ほんとうちんとこの男っちはしょろしょろしてて、やっきりするよぅ!」と追いまわすという静岡の男女の県民性を表しているのではないだろうか。
静岡県の男性諸君、女性に「やっきり」されないように、まめったく動こう。
<by Ko>
【関連リンク】
⇒ 静岡方言辞典『傑作! しぞーか弁』の紹介
⇒ 静岡方言の本『しずおか方言風土記』
⇒ 静岡方言の本『読んでごろじ 静岡方言考』
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